はじめに
本書は著者(芝浦工業大学名誉教授の徳永先生)のブレインライティングに関するノウハウの詳細と発想法関する議論について書かれた本になります。アイデアを出す必要がある場面がある人にとって有用な書籍だと思います。小説のような読み物ではなく、繰り返し読み込むことで真価を発揮する書籍と感じます。1度読んだ時に感じたこと考えたこと使い方を示します。
本書の構成
本書は二部構成となっている。第一部には、「T式 ブレインライティング」の実践ノウハウが詳述してあり、ここを読むだけですぐにこの発想法を現場で使うことができる。~中略~
第二部は、発想法にまつわる先人たちのさまざまな議論を俎上に載せ、発想法とは何か、発想法は有用な技法であるのかを吟味したT式ブレインライティングを利用する人が、それぞれの立場で使いこなし、集団の知恵を生み出す有用な道具、仕事に役立つ道具にするためのヒントがここにある。
本書Page5-6より一部抜粋
T式 ブレインライティングとは
本書で紹介するブレインライティングの手法の名前です。ブレインライティングを実践するメンバーをT型人間で行うことを意図したため、この命名となっています。また、ブレインライティングとは参加者がアイデアを紙に書いて*1、その紙をラウンドごとに回して発想を膨らませていく発想法です。詳しくは、ブレイン・ライティング・シートの使い方 - アイデアプラント オンラインショップなどを参照ください。
第一部にて、このT式 ブレインライティングの実践方法について詳述してあります。名前にあるようにT型人間を想定した発想法であり、専門領域の異なるT型人間を6~10人程度で行うことを想定しています。T型人間を6~10人程度集めるのは、なかなか難しいのではないかと少し思いました。同時に、このメンバー想定はベストの状態であって、人数が4人しか揃わないなどそこから悪くなる場合は、その状況に応じて会議の内容をデザインしましょうということだと思っております。主催者の準備が7割とも書いてあります。
第一部 集団の知恵を引き出す「T式 ブレインライティング」
第一章 T式 ブレインライティング
本章では、T式 ブレインライティングの実践方法が詳述されています。会議の準備、実施、実施中の注意点、終わった後のアイデア抽出、参加者へのフィードバックとPDCAに沿った流れで実践方法が説明されています。また、T式 ブレインライティングの特性についても考察されております。ここを読むことでT式 ブレインライティングがどのようなものであるか知ることができます。ブレインライティング経験者であれば、ここを読み咀嚼することで、そのまま実践可能ではないかと思います。私はブレインライティング自体の経験が無いため、すぐに実践することは難しいと感じております。人数を少なくして、実践する方法はないかと考えてしまいました。私は仕事上、特許に関するアイデア出しをする機会があるため、そこで利用できないかと考えています。また、その前の練習として、友人達とプライベートな内容で何か面白いことができないかなと思ったりもしております。
第二章 実践!T式 ブレインライティング
11例ものT式 ブレインライティングの実践例が記載されております。これを読むことで、どのような使い方があるのか、イメージができます。これら11例を見た感想は、課題設定に失敗すると、コストの割にアイデアの質が良くないものになってしまいそうということです。先にある"主催者の準備が7割"を改めて感じました。会議準備の後半で、この例をパラパラと見ると、自分がどのような会議にしたいかイメージしやすくなるのではないかと考えます。
第三章 ブレインライティングの原形とその特徴
ブレインライティングはブレインストーミングの欠点を改良するために考案された発想です。そこで、本章ではブレインストーミングの課題整理から始まり、ブレインライティングの特徴までを改めて説明されています。T式ブレインライティングではなく、ブレインライティングそのものについて、語られている章になります。ブレインストーミングに対する漠然とした問題のようなものが、ここに課題として明確に記載されていたと感じました。
第二部 発想法とは何か
発想法自体について深く広く考察されております。発想法について馴染みのない私は、この第二部もしっかりと咀嚼し、腹落ちさせていくことで、良いアイデア発想の場を作れるようになると考えています。
第四章 思考・発想・創造と集団の知恵
発想に関する単語である、思考・発想・創造の語源について深掘りしています。読み物としても面白いです。ある物事を深く考える際に、その言葉の語源(ルーツ)を知ることは大切なことだと思います。
第五章 発想法を巡る議論
タイトルの通り発想法を巡る議論に関して概観しております。発想法がこれまでどのように扱われてきているか、さらっと知ることができます。このような情報をネットで収集しようとすると恐ろしく手間がかかるので、有り難い記述だと思います。
第六章 さまざまな発想法
本章は私にとって、とても貴重な章でした。世間的に散らばっている種々の発想法をまとめてくれています。5W1Hはもちろんのこと、TRIZも紹介してくれています。これらの発想法は個別に聞くことはあっても、まとまっていることがありませんでした。本書ではまとまっています。そのため、アイデア発想について考えるときに、この本を手元においておけばすぐに参照することができ、有り難いと感じました。
おわりに
『T式 ブレインライティング』の教科書について、1度読んだ時に感じたこと考えたこと使い方をまとめました。この本は読了することがゴールではありません。本書をヒントに、発想の場を準備し、会議を実践、そこで出たアイデアを形にすることがゴールだと考えます。アイデアを出さなければならない機会はあるので、利用していきたいと思います。まずは、友人巻き込んで簡単な実践をしたいと思います。アイデア出しの必要がある方はぜひ一読下さい。
*1:書くとは考えを外在化させることである。その書いたことは目を通して再び脳で反芻され、その結果としてアイデアは洗練される。話すより論理的で完結性が生まれる 本書Page52より