はじめに
「メッセージ性のある絵封筒を作って、手紙を入れて、送って、親しい人と手書きコミュニケーションをしてみませんか?」そんな提案をしてくれるのが本書エスキューブドスタイル絵封筒*1です。
本題は絵封筒の作り方のノウハウ本なのですが、それだけではありません。
- アートとは何か?
- 趣味とは何か?
- パーソナルコンピュータ(パソコン)の役割とは何か?
- コミュニケーションとは何か?
- メッセージ性とは何か?
と多面的な視点を与えてくれる本でもありました。そんな本書のレビュー記事です。
絵封筒とは
封筒の表に絵を描き、宛名や宛先、切手も、絵に合わせて自由な位置に書いたり、貼ったりして、遊び心を表現するもので、発祥はヨーロッパといわれています。
絵封筒がゆく
エスキューブドスタイルとは
花の絵(Sketch)をテーマにした絵封筒に、その花に相応しい切手(Stamp)と小文(Short message)を添えて、絵封筒に意味レベルの厚みを加えた絵封筒のスタイル、と私は理解しました。
エスキューブドスタイル絵封筒の作り方(フローチャート)
補足
絵封筒の構成を考え、用意する
ここが最もクリエイティブな工程です。送る相手のことや季節を考えて花を選びます。そしてそれに厚みをもたせる切手と小文を考えます。考え方のポイントは本書の第三部コラムで述べられています。
花の写真を加工する
写真の加工工程としては、トリミング、輪郭線付与、色調整、台紙への配置などがあり、手順ノウハウが第二部で述べられています。画像処理ソフトウェアはCLIP STUDIO PAINTを利用されています。
花の絵を塗る
この工程はアナログな世界です。手軽に創造性が発揮できる工程です。明るいところで、塗る位置や色をしっかり見ながら描くことが大切なポイントです。色鉛筆で色付けすることで花や葉が生き生きとしてきます。
エスキューブドスタイル絵封筒へ入門
ここまで読んでいただくとわかるように、かなり工程が多く奥深く完成までの道のりは長いです!そこで、本書では近道も用意してくれています。花の絵と小文を添えた絵封筒の台紙サンプルを掲載してくれています。これをスキャン/プリントアウトすることで、フローチャートの絵封筒Ver1.0を手軽に用意できるようになっています。これを使ってみるのも良いと思います。
感想
エスキューブドスタイル絵封筒は面白くて奥深くて気長にお付き合いする行為だと思いました。親しい人と手紙でコミュニケーションすることはLINEやTwitterとのコミュニケーションとは一線を画すものであり、今後は手書きコミュニケーションに触れる時間も作っていこうと思った次第です。
本書の構成は第1部エスキューブドスタイル絵封筒で手紙を送ろう、第2部エスキューブドスタイル絵封筒台紙を作る、第3部コラム、となっています。
個人的には第1部のエスキューブドスタイル思想と第3部コラムが面白かったです。ヒューマン・コンピューター・インタラクション研究者としての視点が多分に含まれており、はっとさせられる文章が満載でした。なお、第2部は絵封筒作成中級者向けと思いました。
また絵封筒作成にあたり画像処理ソフトウェアを使っていますが、あくまで絵封筒台紙作成までの補助ツールであり、主役ではありません。絵封筒作成という趣味において、たまたま画像処理ソフトウェアが便利だから利用したということです。これはパーソナルコンピュータの元来的な役割であったように思います。いまはPCありき、PCが主役で何をするか、という考え方が一般的なように思い、気づきを得られました。
終わりに
著者は私の大学時代の恩師で、連絡をいただいたときは、またなんとも変化球な本を出されたな笑と思いました。しかし読んでみると、技術書的な要素と芸術的な要素がものすごく高いレベルで融合しており、他に類をみない本になっていると思いました。
手書きコミュニケーションに興味がある方にオススメします!
*1:書籍ではSに3の上付き文字で記載されていますが、本ブログで上付き文字表示が大変なのでカタカナ表記にしています。