はじめに
本書は森一樹さんが技術書典5で配布された書籍で、ふりかえりの体系的な解説、場作りのたいせつさ、そして50ページにわたるアクティビティの紹介が書かれた本になります。ふりかえりとは何かを一歩ずつ理解できる素晴らしい書籍だと思います。平易な文章で読みやすく、また構成が素晴らしいので目次を見るだけでワクワクします。私はふりかえりに興味があり、ふりかえり文化を現場に創りたいと考えています。ふりかえりの種を撒く方法と根付かせる方法を考えながら読んだ感想です。
本書の対象読者
・ふりかえりをやっているが、うまくいっていない人
・ふりかえりのファシリテーションを学びたい人
・ふりかえりのいろいろな手法を知りたい人
・ふりかえりに興味のある人
本書の構成
1章 ふりかえりの種類
ふりかえりの定義、4分類が解説/図示されてあり、ここを読むとふりかえりの種類を構造的にイメージできるようになります。4つの分類はひとり、チーム、プロジェクト、組織になります。
本書Page7より引用
本書を読み、紹介されているYWTを調べればひとりのふりかえりはすぐに実践できます。そして、チームのふりかえりにつなげていければ文化形成となっていくと考えています。文化形成には、小さく変えていくことと現状に違和感を与えないことが必要*1で、ひとりからチームへつなげるためには、各現場ごとに工夫していかないといけないと思います。私の現場では、マネージャーからの提案で既にチーム内でデイリーMtgを行う習慣があります。ここから少しずつふりかえり文化を根付かせられるのではないかと、画策中です。今は、個人が現状を報告するのみで、YWTなどのアクティビティは採用していません。
2章 チームにありがちな諸症状
ふりかえりが機能していないチームの諸症状を紹介されています。具体的には、マンネリ化、反省会化、忙しいのでふりかえりをスキップ(スキップ化)、の3つです。
私の現場ではスキップ化が発生しています。プロジェクト完了ごとにふりかえりを行う制度はあるのですが、チームでふりかえる制度/文化はないです。文化がない言い訳として、「忙しい!それどころではない!」が使われています。
3章 ふりかえりの3つの目的と3つのステップ
チームの病状を把握した上で、ふりかえりの目的を学べます。ここでふりかえりの目的を理解し、病気を治すための処方箋を考える足がかりにできます。3つの目的は、立ち止まる、チームを成長させる、プロセスをカイゼン*2する、です。
立ち止まることの意義について、ランニングの比喩を用いられているのですが、非常にわかりやすかったです。最初に計画を行っても、プロジェクト途中で状況はどんどん変わっていきます。だから、立ち止まり冷静になってこれまでの行動を見直し、これからの行動を決定すること、つまりふりかえり*3は大切です。
4章 ふりかえりにおける場作りとは
ふりかえりでもっとも大事なものは「場作り」であると述べられています。その場作りについて、心理と物理の2側面から解説してくれています。この場作りによって、「前向きな対話」が出来る環境を目指します。
感想として、「場作り」難しい!、です。私の現場で行われるプロジェクトのふりかえりでは、アンチパターンであるディスプレイにふりかえり内容を映して、各反省点に対して原因と対策を考えるものになっています。ふりかえりを全くしていなければゼロスタートなのですが、アンチパターン実践中の場合、現場を否定するところからのマイナススタートなので、変えていくためには工夫が必要と感じています。
5章 チームのふりかえりの10の流れ
ふりかえりに必要な検討項目を10の流れにまとめてくれています。具体的には、下記の10ステップになります。各ステップで何をなぜ行うかなどポイントが記載されております。
1. 目的を考える
2. 構成を考える
3. 事前準備をする
4. 物理的な場を作る
5. 心理的な場を作る
6. データを収集する
7. アイデアを出す
8. アクションを決定する
9. ふりかえりを終了する
10. ふりかえりをふりかえる
近々プロジェクトのふりかえりを行う機会がありますので、この流れに沿って考えたいと思います。
6章 心理的な場作りのためのアクティビティ
心理的な場作りのためのアクティビティが20個紹介されています。それらは、チームビルディングのための場作り、ふりかえりのルールを決めるための場作り、ふりかえりの目的を決めるための場作り、アイスブレイクのための場作りの4つに分類されています。また、心理的な場作りはふりかえりの最初の5分~10分でも良いので必ず行うようにとのことです。
先にあるように、現場ではアンチパターンのふりかえりを実践中です。その中でいかにこのアクティビティを小さな変化で入れるかが、個人的に難しいと思っている部分です。5,6章を熟読し、何か試してみたいと思います。
7章 付録 ふりかえりチートシート
ふりかえりのアクティビティの分類とその特性をまとめた表があります。
私は6章の内容でお腹いっぱいですので、追々確認させていただきたいと思っています。ふりかえりは深いということがわかりました。
おわりに
本書の内容と私の現場状況を交えてのレビューをさせていただきました。この本でふりかえりについて改めて学ぶことができ本当に良かったです。また、現場で丁度ふりかえりを行っているタイミングであったので、早速使わせてもらえる状況なのは、僥倖という他ありません。上梓ありがとうございました!
書籍の性質上、書店での買い求めは難しいですが、著者より下記とのことですので連絡をとっていただければ入手可能と思われます。
※もし購入希望の方がいれば、twitter(@viva_tweet_x)やFacebookまでご連絡ください。
※今年中に電子書籍版はリリースしたいと考えています。そちらも合わせてお楽しみいただけると幸いです。
qiita.com
*1: 新しいことを働きかけるときは、働きかけ先の違和感の閾値を超えないように、コンテキストをあわせながら少しずつインプットする。違和感の閾値を超えると、相手は不安になり、不安の閾値を超えると心のシャッターがおりる。
決して人は正論だけでのみこめないのだ。
*2:本書では、改善は単発的なもの、、カイゼンは継続的なもの、という意味で利用しています。Page24より
*3:本書では、ふりかえりは「過去の行動を見直し、未来の行動を決定する」と定義しています。 Page6より